サルトリア・ピロッツィは今でもマエストロとして活躍するヌンツィオ・ピロッツィが開設したサルトリアです。
1950年代にまだ10代であったヌンツィオ・ピロッツィは、仕立て服への情熱を抱き、当時ナポリ近郊の街カザルヌオーヴォにあったマエストロ・ソッレンティーノの仕立て学校に入りました。
このカザルヌオーヴォはナポリから数十分、郊外の小さな町です。
この頃は住んでいる人のほとんどが仕立て服に関わっていたと言われるほど、職人たちが集まって住んでいる場所でした。今でも小さなサルトリアや、人気ブランドのスティレ・ラティーノなどの下請け工房、キートンのファクトリーなどが存在しています。
このカザルヌオーヴォはヌンツィオ・ピロッツィのホームタウンでもありました。
マエストロ・ソッレンティーノの仕立て学校では賃金をもらうことはできず、ただ仕立ての情熱のため無償で仕事をしていたと言います。
彼が徴兵制の軍務に服していたときには、彼はイタリア軍のオフィス用ユニフォームを作っていたと言います。
1964年、彼はナポリ中央駅の近くに初めて自分のアトリエを開きました。このとき、彼のサルトとしての夢が実現したのです。
現在はサルトリア・ダルクオーレのアトリエからすぐ近く、アンナ・マトッツォのアトリエがあるのと同じヴィアーレ・アントニオ・グラムシ通りにサルトリアを構えています。
この辺りはナポリのメルジェリーナ駅から近く、美しいアパルトマンが立ち並ぶ高級住宅街です。
現在はヌンツィオ・ピロッツィの息子であるドメニコ・ピロッツィが仕立てを引き継ぎ、娘のジョヴァンナ・ピロッツィがマネージャーとして参加しています。
サルトリア・ピロッツィの仕立て
サルトリア・ピロッツィの仕立ての特徴は、ナポリ仕立ての歴史を感じさせるオーセンティックなシルエット、上品で控えめなディテールと非常に丁寧な仕立てです。
一眼サルトリア・ピロッツィのスーツを見れば、その仕上げの美しさに見とれてしまうでしょう。
手間をかけたアイロンワークが生み出す自然な立体感(カーブした型紙を引くのは簡単ですが、まっすぐな生地をアイロンワークでカーブさせたものは、雰囲気が異なります)と、縫製の綺麗さ。
特にステッチワークやボタンホールなどには、そのサルトリアで働く職人たちの熟練度合いが顕著に現れます。サルトリア・ピロッツィのスーツはどこまでも熟練した職人技を感じます。
胸周りにはボリュームがあり、ラペルは内向きのカーブを描くだけでなく、痩せている人の体もリッチに見せる立体感があります。
事実サルトリア・ピロッツィのドメニコも筋肉質な方ではないですが、スーツやジャケットを着ているときには非常に男らしく見えます。
大胆な雨降らし袖は、むしろオールドスタイルな雰囲気です。
サルトリア・ピロッツィの親子がとても良い人柄であることも見逃してはいけません。常に誠実に、職人としての真面目さを決して失いません。
サルトリア・ピロッツィは間違いなく、ドメニコの世代になってもナポリを代表するサルトリアであり続けるでしょう。