サルトリア・チャルディは、偉大なマエストロであるレナート・チャルディが創業したサルトリアです。
レナート・チャルディはナポリ仕立てを生み出した職人の一人であるアンジェロ・ブラージで修行をしたサルトで、ナポリではアントニオ・パニコと並ぶ最高峰のサルトとして名を馳せていました。
Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディの現在
レナートは残念ながら昨年4月に亡くなってしまいましたが、長男であるエンツォ・チャルディと次男のロベルト・チャルディの二人が跡を継ぎ、サルトリアは未だにナポリを代表する老舗として仕立てを続けています。
父(レナート・チャルディ)は仕立てだけでなく、人生全ての先生だった。自分たちは大事なことを変えてしまわないよう、未だに古い方法で服を仕立てている。理由はシンプルで、これがサルトリア・チャルディの伝統だからだ。
– Enzo Ciardi エンツォ・チャルディ
事実サルトリア・チャルディの工房では父レナートと共に働いてきたパスクアーレを始めとして、合計5〜6人の職人がいるのみです。
サルトリア・チャルディの工房は昔ながらのサルトリアらしくミシンは一台だけ、裁断や手縫いのための大きな作業台が三つあって、そこで職人たちが仕事をしています。
この規模では既製服をいっぺん何着も作ったり、スーツを短期間で仕立てるのは不可能です。あくまでスミズーラを中心に仕立てているということがよくわかります。
工房の奥の棚に掛かっている仕立て途中のスーツ。
サルトリア・チャルディの顧客は様々です。私が工房で仕立て途中のスーツをよく見かけるのはイタリア現地の顧客と、プロフェソーレ・ランバルディ静岡のお客様で全体の4割ほど。その他にはフォックスやバルベリスといった生地メーカーのCEO、シャツブランドMarolのオーナー、タイの大富豪などのオーダーしたスーツは常にラックに掛かっています。
またイギリスの有名ブログであるPERMANENT STYLE パーマネント・スタイルの著者サイモン・クロンプトンや、THE ITALIAN GENTLEMAN イタリアン・ジェントルマンの著者であるウーゴ・ジャコメなどのスーツも見かけますね。
Enzo Ciardi エンツォ・チャルディ 父の伝統を受け継ぐ仕立て職人
創始者であるレナート・チャルディのことは知っていても、長男のエンツォ・チャルディのことは知らないという方も多いかもしれません。
エンツォ・チャルディは見た目からは想像できないほど温厚な性格の持ち主です。
彼はすでに35年にもわたってサルトとして仕事をし続けており、常に父レナートの仕事を横で見ていました。
精力的にトランクショーのために海外へと飛びながらも、ナポリの工房では朝から黙々と作業を続ける一人の職人です。
サルトリア・チャルディではエンツォ・チャルディがメインでカッティングを行なっており、ロベルト・チャルディやパスクアーレがその他の部分を担当します。
チャルディのハウススタイルについてよく聞かれますが、私たちの服はあなたの体の形を踏襲しています。すなわちそのスーツのスタイルは、あなたの個性に他ならないのです。私たちの服は完璧ではありません。しかしその不完全さが、そのスーツを世界で唯一のものにします。サルトリア・チャルディの職人たちの手仕事とあなたの個性、そしてあなたの(生地や仕様における)選択が、世界で唯一のスーツを作り上げるのです。
Enzo Ciardi エンツォ・チャルディ
エンツォ・チャルディのフィッティングは父レナートのものと、ほとんど変わりません。決して攻めすぎず中庸を保ち、エレガントな余裕を表現すること。
肩幅はぴったりと合わせ、チェストには適度なボリューム感、ウエストは程よく絞り、切れ長なラペルは実に堂々とした雰囲気。
ハウススタイルと彼らは呼ばなくても、そのスタイルには確固たるサルトリア・チャルディらしさが息づいています。