ナポリ仕立てを語るうえで欠かせないのが、マニカ・カミーチャと呼ばれる独特の袖付け技法です。
マニカ・カミーチャはずばり「シャツ袖」という意味です。すなわちシャツのように、肩側の生地が袖側の生地に覆いかぶさるような袖付けの仕方をマニカ・カミーチャと言います。
誤解されがちですが、袖にギャザーを寄せるのがマニカ・カミーチャではありません。一般的なスーツは割袖といって、肩と袖が平らにつながっていますが、この写真の袖付けでは袖が下に入り込んでいます。
これが、シャツの袖付けと似た手法なのです。
改めてシャツの袖付けを見てみると、その手法が似ていることがわかります。
ですから例えばギャザーが寄っていても、このような袖付け手法でなければ、それはマニカ・カミーチャではないのです。
ちなみにナポリではこういった袖付けの仕様をマニカ・カミーチャというよりもManica a Mappina マニカ・マッピーナと呼ぶことが多いです。
Mappina マッピーナはナポリ方言で、家具の埃を払うモップのようなものを意味し、マッピーナ袖はそれを連想させるギャザーの寄った袖付けを示すようです。
そのためギャザーの寄った袖という意味では、マニカ・マッピーナの言葉を使用した方が正しいでしょう。
ナポリのサルトリアでオーダーするときは?
しかしそれを含めても、結局これらはギャザーを寄せてシャツ袖と同じ手法でジャケットの袖付けをすることであり、ナポリだからと言って必ずしもギャザーがたくさん寄ったものが出来上がってくるとは限りません。
ナポリではギャザーをあまり寄せないサルトも多く、その具合はサルトリアによります。
あまり注文をつけてしまうと、逆にサルトリアの個性やキャラクターが生かされないため、袖付けについてはできる限り職人に任せるのが良いでしょう。
また評判や知名度にこだわらず、好みの雰囲気の袖付けをしているサルトリアを選ぶのもおすすめです。